陳若冰 「malerei」2003年1月25日-3月8日 タグチファインアート |
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陳若冰(チェン・ルオビン)は1970年中華人民共和国生まれ。杭州美術アカデミーで学んだ後、1992年に渡独し1998年にデュッセルドルフ美術アカデミーを修了しました。2000年にはアーティスト・イン・レジデンス・プログラムで数ヶ月間、アメリカ・コネチカットのジョセフ・アンド・アニ・アルバース財団に滞在。現在はドイツ、デュッセルドルフを拠点に制作活動を続けています。 西洋近代と中国絵画との出会い祖国で伝統的な風景画を学んだ若き中国人画家が渡ったドイツは、当時統合直後の困難な状況下にありました。異なる国家体制のもとで生活してきた人々の融和が課題とされるなか、陳は中国絵画とはまったく異なる展開を遂げてきたヨーロッパ近代絵画と向き合うことになります。デュッセルドルフ美術アカデミーを修了するまでの7年間は、それまでに身につけた中国絵画の伝統と、西洋近代とをどのように作品として結び付けるべきかの試行錯誤の期間でした。 アカデミー修了後、ドイツとフランスを中心に継続的に作品を発表していますが、現在にいたるまで、ヨーロッパ文化のなかで制作する中国人画家という、陳の制作の基本的な立場は変わっておりません。 単純な形態の反復デュッセルドルフ美術アカデミー修了前後の陳の作品は、漢代の中国絵画から引用した形態や、中国で身近にある事物を抽象化した形態を単純化し、奥行きを排した画面に不規則に反復して描く仕事でした。 ここで注目すべきことは、画面で反復されている形態が、たとえ中国に起源をもっていたとしても、できあがった作品として見た際には、それが何を再現しているのか見る者にはまったくわからないという点です。むしろ描かれた形態が、元になったものの痕跡を何も残していないという無名性に、その積極的な意味を求めることができます。地と図の等価関係具象、抽象によらず、絵画においては、ある特定のかたちが「図」として「地」に対して特権的な立場におかれていることが普通です。陳の作品のように、描き出した形態に何も意味を与えないということは、特権的な地位を「図」に与えないということです。地色と描かれた形態は、同一平面上にあってどこまでも等価となっています。その結果、作品を見るわたしたちが意識をずらしたとたん、今まで背景として見えていた部分が図として浮き上がり、図として見えていた部分が地として背後に後退していきます。 地と図がつねに揺らいで逆転し、そこに運動感が生じます。 絵画空間と装飾性アンリ・マティスを例にあげるまでもなく、西洋近代絵画は、空間表現、すなわちパースペクティブを乗り越える表現方法のひとつとして、東洋美術によく見られる平面的な装飾性に注目し、それを積極的に取り入れてきました。この装飾性を実現するうえで有効な手段のひとつが、陳が試みている「地」と「図」を等価にする方法です。中国絵画を学んだ陳にとって、こうした方法は慣れ親しんだ方法でもあります。 この点だけをみても、東洋的な要素をも積極的に導入してきた西洋近代絵画と中国絵画との融合という問題は、単純な二項対立の構図からは容易に理解できないことがわかります。 内なる光陳の近作には、これまでの作品からの明らかな発展がみられます。絵の具を油彩からアクリルに変え、また描く形態も矩形や円形など、どこにも出典をもたない、より抽象的な幾何学的形態になってきました。さらに、いくつかの作品に特徴的ですが、画面内奥から作品外部に向かって溢れ出る光が描かれています。作家はこれを「内なる光(inner light)」と表現していますが、これは彼の形而上学的な関心を示していると考えることができるでしょう。これからの一層の展開が期待されます。 陳若冰は2002年5月にドイツのリップシュタット芸術家協会で個展を行い、また2004年には、ドルトムントのアム・オストヴァル美術館、ロムメアスキルヒェンージンシュテーデンの文化センターでの個展が予定されているなど、現在その活動が注目されています。 タグチファインアートにおける展示は、陳が日本で作品を発表する初めての機会となります。 |
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出品作品 | ||
1. Winterrot, 1999, 油彩・キャンバス, 25 x 24 cm | ||
2. Intervalle, 1999, 油彩・キャンバス, 26 x 26 cm | ||
3. starten, 2000, 油彩・キャンバス, 22 x 21 cm | ||
4. 無題, 2001, アクリル・キャンバス, 54 x 52 cm | ||
5. 無題, 2002, アクリル・キャンバス, 30.3 x 30.4 cm | ||
6. 無題, 2002, アクリル・キャンバス, 35.1 x 35.4 cm | ||
7. 無題, 2001, アクリル・キャンバス, 35 x 35 cm | ||
8. 無題, 2001, アクリル・キャンバス, 46.2 x 44.3 cm | ||
9. 無題, 2001, アクリル・キャンバス, 140 x 150 cm | ||