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クリスティアーネ・レーア 「12 プリンツ」


2019年1月26日-3月23日 タグチファインアート











































このたび、タグチファインアートからドイツの彫刻家クリスティアーネ・レーアによる版画作品が出版される運びとなりました。その初公開として上記の期間約8週間にわたり、作品展示をおこないます。


クリスティアーネ・レーアは1965年、ドイツ、ヴィースバーデン生まれ。ボン大学で考古学や歴史学、マインツ大学で芸術教育学などを学んだ後、デュッセルドルフ美術大学で学び、1996年にヤニス・クネリスからマイスター・シューラーリン資格を取得。現在はドイツ、ケルンとイタリア、プラートを拠点に活動しています。ミラノ近郊ヴァレーゼのパンザ・ヴィラ・アンド・コレクションにおける個展をはじめ、世界各地で展覧会を開催。作品は多くの美術館や著名コレクターの所蔵となっています。彼女は2016年のピーノ・パスカーリ賞の受賞者であり、世界的に注目されている作家の一人です。


クリスティアーネ・レーアは、自然界に存在する植物の種子や茎、馬の毛や犬の毛といった、普通彫刻には使われない素材を使って立体作品を制作し、形態や空間を研究しています。タンポポの綿毛を敷き詰めたクッション、キヅタの種子を積み重ねた寺院、草の茎を寄り添わせたドーム、アザミの種子をヘアネットに詰め込んだ袋、針と馬の毛によって生み出された“あやとり”のような形態、などです。それらは、近づいて見るまでその存在すら見逃してしまいそうなほど小さく繊細ですが、仔細に観察すれば、次第に堅固な構造物に姿を変え、周囲の空間を支配するほどの存在感で、わたしたちを圧倒します。


そのユニークさゆえ、彼女の関心が素材となっている植物や動物にあるように思われがちですが、実際はそうではありません。植物の可憐さや有機的な形態、色あい、美しさは、彼女の作品の一部となってはいますが、本質は違うところにあります。レーアがそれらを作品の素材として選ぶ決意をしたのは、子供の頃から慣れ親しみ、それゆえ性質を熟知しているからです。 ヤニス・クネリスはイタリアの芸術運動「アルテ・ポーヴェラ」の中心的作家です。彼らの特徴として、身近な素材を作品に使用するということが挙げられます。クネリスのもとで学んだ経験から、レーアは自らのヴィジョンを視覚化するために、自分が慣れ親しんでいる植物や動物の毛を素材として利用することに確信を得ている、と言えるでしょう。


レーアの制作の本質は、素材そのものが本来的に備えている構造や機能をじっくりとそして正確に見極め、それらが視覚的により増幅されるように再構築することです。素材や空間との忍耐強い対話を通して、彼女は世界の背後にあって自然や有機物を成立させている数学的な法則や力、秩序や建築的な構造を探求しているのです。


彼女は彫刻と平行してドローイングの制作もおこなっています。植物のかたちをモチーフとして借用してはいますが、何かを写しているわけではありません。彫刻家である彼女の関心は紙という白い空間をオイルパステルや鉛筆によってどのように分割していくか、というその一点にあります。それによって強度な緊張感が生まれています。


今回は東京、調布の版画工房、エディションワークスでの滞在制作でしたが、初めて挑む制作技法であるにも関わらず、レーアはその鋭い感性により、素材や技法の性質に敏感に適応、吸収し、自らの表現として的確に展開することに成功しています。


2014年の資生堂ギャラリー(東京)におけるグループ展「せいのもとで」や2015年のヴァンジ彫刻庭園美術館(静岡)での個展「宙をつつむ」、2017年の佐倉市立美術館(千葉)に置けるグループ展「カオスモス5:一粒の砂に世界を見るように」など、日本でも精力的に作品を発表しているクリスティアーネ・レーア。タグチファインアートで4度目の個展となる本展では、エッチング、アクアチント、カーボランダムそれぞれ4種、合計12点の新作版画と、ドローイング、植物を素材にした立体作品を展示致します。


なお、展覧会初日1月26日 (土) 17時より20時まで作家を囲み、ささやかなレセプションを行います。



PDFカタログ



版画以外の出品作品


1.
大きなドーム, 2019
草の茎
22 x 30 x 30 cm

2.
凹面の形, 2019
植物の茎
4.5 x 1.5 x 1.5 cm

3.
小さなドーム, 2019
植物の茎
4.5 x 10 x 9 cm

4.
無題, 2018
オイルパステル・紙
70 x 50 cm