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フランク・ゲアリッツ 「彫刻と版画」


2019年11月2日-12月28日 タグチファインアート
























 フランク・ゲアリッツは1964年ハンブルク近郊、バート・オルデスロー生まれ。現在ハンブルクを拠点に、ヨーロッパ、アメリカ、日本で定期的に作品を発表しています。その作品はヴェサーブルク美術館(ブレーメン)、ハーグ市立美術館、ポントワーズ美術館、パンザ・コレクション(ヴァレーゼ)、ナショナル・ギャラリー(ワシントンDC)、ブルックリン美術館(ニューヨーク)、メニル・コレクション(ヒューストン)等、多くの美術館、個人コレクションに収蔵されています。

 ゲアリッツは、抽象的・幾何学的な言語によって作品を制作している今日の作家のなかで、最も重要な作家のひとりです。ゲアリッツの作品はミニマリズムやコンセプチュアルアートの道を遡るものとも言えますが、彼の作品において重要なのは、個々人の生き生きとした知覚に関わる性質です。鉛筆のストロークや刷毛の跡、周囲の状況に応じて変化する佇まいなど、彼の作品は表面的な見かけよりも実に深淵であり、美術史の議論に対しても常に多様な引用と見解との複雑な織を提供しています。


 4回の個展やアートフェアを通し、タグチファインアートはこれまでゲアリッツの4つの主要な平面の仕事をご紹介してまいりました。「アノダイズ処理されたアルミ板の上にペイントスティックで描くドローイング」、「MDFパネルに描く鉛筆のドローイング」、「紙に鉛筆で描くドローイング」、「著名な美術作品の図版の上にペイントスティックを塗った案内状とオークションのシリーズ」です。今回は現在のこれらの作品の出発点となった彫刻作品と、そこから生まれた版画作品に焦点を当てます。


 作家としてのキャリアの当初、ゲアリッツは人間の頭部などを石彫で制作していました。その後1988年に、人体各部の寸法(頭の大きさ、肩幅、歩幅など)を基準とした、鉄を鋳造して作ったブロックを組み合わせる抽象度の高い彫刻作品へと移行します。無垢の鉄の立方体や直方体が整然と並べられ、簡潔で力強いインスタレーションが展開されましたが、彫刻の底の面、床と接して通常は見ることのできない面を視覚的に提示したいという欲求が彼に湧き起こりました。それを実現する手段として制作されたのが、彫刻の底の面に直接インクを載せて紙に刷りとる版画作品です。これらの版画作品をゲアリッツは"Standflaeche"と呼んでいますが、日本語では「占有された領域・面」の意味で、まさに彫刻作品が占有する場所を可視化した作品と言えます。 ッツの手によりどのようにミニマルアートに変貌させられているか、愉しくご覧頂けましたら幸いです。


その後、底面のみならず総ての面を鉛筆でドローイングすることが彼のドローイングの原点となり、現在の平面の仕事へと発展していきます。


平面の仕事への集中やその発展、あるいは鋳造所の問題等により、ゲアリッツは彫刻作品のエディション制作を中断せざるをえませんでしたが、昨年ついにそれを再開しました。今回は当時の彫刻シリーズのなかでも最も代表的な「Blockformation II (1990)」と、1988年から1992年に制作された全23点の版画作品のうち、約半数を展示致します。



出品作品

1.
ブロックフォーメーション II, 1990/2019
鋳鉄, エディション 2/3
20 x 20 x 20 cm

2.
ブロックフォーメーション I, 1989
版画, エディション 6/10
29 x 107 cm/ 50 x 107 cm (2点組)

3.
ブロックフォーメーション II, 1989
版画, エディション 10/10
53.5 x 78.5 cm

4.
ブロックフォーメーション III, 1990
版画, エディション 9/10
53.5 x 78.5 cm

5.
クロスブロックフォーメーション, 1992
版画, エディション 2/10
53.5 x 78.5 cm

6.
ブロック I-IV, 1988
版画, エディション 4/25
各 58 x 48 cm (4点組)

7.
トゥー・センター・ブロック I-IV, 1996
版画, エディション 7/10
各 48 x 68 cm (4点組)