japanese I english

キム・テクサン「時の皮膚」


2018年10月13日 - 12月15日 タグチファインアート
















































キム・テクサン(金澤相)は1958年韓国ソウル市生まれ。1985年に中央大学美術学部を卒業し、1987年に弘益大学大学院美術研究科修士課程を修了。現在ソウル近郊一山市在住。韓国内外で作品を発表し、中国やドイツ、インドネシア、アルゼンチンを巡回した「Empty Fullness」展をはじめとして、韓国抽象絵画を紹介する海外巡回展には欠かせない存在となっています。


モノクローム絵画の伝統

 韓国では1970年代から活発化した“Dansaekhwa”と呼ばれるモノクローム絵画運動が、現代美術における主流のひとつとして、重要な潮流を形成しています。独自の発展をとげてきたこの韓国の抽象芸術は近年、日本の「具体」や「もの派」とともに、国際的に大きな注目を集めています。
 1990年代に作品の発表を開始した世代には欧米での留学経験をもつ作家も多く、モノクローム絵画も素材や技法において多様な展開を示しています。キム・テクサンは留学経験こそありませんが、こうした同世代の作家との交流を通し、韓国人作家としてのアイデンティティーを探るとともに自らの思想を深め、作品のオリジナリティーを確立すべく模索してきました。今日では “Dansaekwha” 第二世代の中心的な存在となっています。


自然の痕跡

 キム・テクサンはその制作において、筆もペインティング・ナイフもパレットも使いません。彼はまず、特別に用意した長方形のプールにキャンバスを浸し、アクリル絵の具を溶かした水を注ぎます。注がれた水はその痕跡をキャンバスに残しながらゆっくり蒸発していきます。季節や気候に応じて、水は様々に異なる模様を残します。この制作過程において、作家はただひたすら待つのみです。適当な時期を見はからって排水し、キャンバスを乾かします。この工程を何度も繰り返し、キャンバスに色の層を幾重にも重ねていきます。


時間の絵画

 こうして制作されるキム・テクサンの作品は水の痕跡そのものであり、樹木の年輪と同様、時間の痕跡でもあります。彼がなすべきことは、時の流れが痕跡というかたちで自らを現わす環境を整えることに尽きます。



自然の色彩と光の表現

 キム・テクサンが扱う色彩は、自然界に存在する現象から選ばれています。夕日の赤色、水や空の青色、樹木の緑色、太陽の黄色などです。それらの色彩を何層にも重ねることで、それぞれの層に複雑に反射する光が独特の色彩を生み出します。まるで皮膚を透かして血管や内部の組織の色が浮き上がってくることで生まれる人間の肌の色のようです。

 時間をかけてゆっくり制作される彼の作品は、時間を経ることで得られる成熟や熟成という感覚や観念を見る人に与えるような色彩、柔らかで優しい色彩に覆われています。 タグチファインアートにおける今回の展示は、彼の日本で6度目の個展となります。より一層淡くデリケートな色彩を湛えた作品を中心とした展示になります。




出品作品


1.
ブリージングライト - ブルーグリーン, 2018
水, アクリル, キャンバス,132 x 115 cm

2.
ブリージングライト - ジェイドブルー, 2018
水, アクリル, キャンバス,132 x 124 cm

3.
ブリージングライト - スカイ, 2018
水, アクリル, キャンバス,131 x 131 cm

4.
ブリージングライト - グリーニッシュレッド, 2018
水, アクリル, キャンバス,58 x 48 cm

5.
ブリージングライト - パープル・アンド・バイオレット, 2018
水, アクリル, キャンバス,110 x 87 cm

6.
ブリージングライト - グリーニシュブルー, 2018
水, アクリル, キャンバス,160x 57 cm

7.
ブリージングライト - ピーセス・オブ・スカイ, 2018
水, アクリル, キャンバス, 27 x 22 cm