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ミヒャエル・テンゲス 「絵画」


2017年1月14日-2月18日 タグチファインアート
































 ミヒャエル・テンゲスは1952年、ミュンヘン近郊のプファッフェンホーフェン・アン・デア・イルム生まれ。クレーフェルト造形大学卒業後、1980年から1981年までデュッセルドルフ美術大学でフリッツ・シュベーグラーのもとで学び、現在はレバークーゼンとケルンを拠点に制作活動をおこなっています。ドイツ、スイス、ベルギー、オランダ、アメリカで発表を重ね、その作品はケルンのコロンバ大司教区美術館や、スイスのアアラウ美術館等に収蔵されています。

 テンゲスの絵画に特徴的なのは、彫刻的ともいえる厚みまで塗り重ねられた圧倒的な絵の具の量、そして使われている色彩の多様さです。彼は様々な色彩の筆致を幾重にも積み重ね、とても豊かな画面を生み出します。新たに加えられる色彩はそれぞれ独立した個々の筆致として重ねられるため、先に塗られた色彩が完全に覆われてしまうことなく、ところどころ見え隠れします。彼の作品では色彩の配置が、平面的な広がりにおいてだけではなく奥行きにおいても考慮され、三次元的に構築されているのです。

 これほど沢山の色彩を使用しながらも、その画面が少しも破綻せず美しい調和を見せているのは、色彩と格闘し続けて来た作家のこれまでの長いキャリアの成果に他なりません。テンゲスは初め風景や静物など具象的な絵画から出発しました。ある時、彼は自分の関心が色彩の配置や対比、構成であることに気づき、イメージや形態から解放されます。以来ずっと、絵画を成立させる基本的な要素である、色彩の構成や絵の具の物質性の問題に取り組んでいます。

 前回の展覧会で展示しましたが、彼はジョットーやフラ・アンジェリコ、ルーベンス、ベラスケスを初めとしたかつての巨匠たちの作品の模写を通じて、つねに彼らの色使いを研究しています。中世からルネサンス絵画、そして身近に見て育ったドイツ表現主義の画家たちへと脈々と連なるヨーロッパ絵画の色彩が、テンゲスの絵画のなかに息づいています。

 こうした研究者肌のテンゲスですが、あらかじめ周到なデッサンをしたり、完全なイメージやプランをもって制作にとりかかるわけではありません。「昨日まで上手くいっていた画面が、今日置いた一色で台無しにしてしまうこともよくある」と彼は言います。予断を持たずに画面に向かい、ひとつひとつのタッチを慎重にかつ大胆に置いていきます。輝く宝石のような作品たちは、彼のたゆまぬ色彩研究の努力だけでなく、腕のストロークがもたらす偶然の形態や予期せず生まれる色彩の新たな関係など、瞬間、瞬間の画面との真剣勝負によって生み出されているのです。

 4度目の個展となる今回では、新作絵画を展示致します。近年の彼の関心はドイツ印象派の画家たちの作品にあり、これまでの明るく鮮やかだった作品から落ち着いた寒色系の色使いの作品へという変化を見ることができます。

なお、初日1月14日(土)17:00より19:00までこの機に来日する作家を囲み、ささやかなレセプションを行います。



出品作品

1.
無題 (25-16-32-28), 2016
油彩・板, 32.0 x 28.0 cm

2.
無題 (37-16-90-80), 2016
油彩・キャンバス, 90.0 x 80.0 cm

3.
無題 (34-16-32-28), 2016
油彩・板, 32.0 x 28.0 cm

4.
無題 (11-15-90-80), 2015
油彩・キャンバス, 90.0 x 80.0 cm

5.
無題 (15-16-40-35), 2016
油彩・キャンバス, 60.0 x 50.0 cm

6.
無題 (28-16-32-28), 2016
油彩・板, 32.0 x 28.0 cm

7.
無題 (26-16-50-40), 2016
油彩・キャンバス, 50.0 x 40.0 cm

8.
無題 (22-16-40-35), 2016
油彩・キャンバス, 40.0 x 35.0 cm