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サイモン・モーレイ「モノグラフ」


2012年11月24日-12月22日 タグチファインアート






























サイモン・モーレイは1958年イギリス、イーストボーン生まれ。1980年にオックスフォード大学マンスフィールドカレッジで近代史を学び、1998年にロンドン大学ゴールドスミスカレッジで芸術学修士を取得。現在はフランス・アリエとイギリス・ウインチェスター、韓国・ソウルを拠点に活動しています。作品制作のかたわら、各地のアーティスト・イン・レジデンスにも積極的に参加、キュレーターとしても多くの展覧会を企画してきました。また様々な美術雑誌に論文を執筆、さらに美術史の研究書「Writing on the Wall - Word and Image in Modern Art, Thames and Hudson, 2003」を著わすなど、その活動は多岐に及んでいます。




言葉とイメージ

 或る単語や文章を象徴的な字体(字体にはそれぞれ歴史的意味があります)で、キャンバスの上に散りばめて描く「ウイルス」、歴史上の人物の署名を拡大して壁に直接描く「署名ペインティング」、展覧会で使用される作品キャプション(ラベル)を描いた「ラベル・ペインティング」、書籍の表紙あるいはタイトル・ページをキャンバスに描く「ブック・ペインティング」、映画のDVDのジャケットや字幕付きのスチールを描く「DVDペインティング」、実際に使用された絵葉書をキャンバスに描く「ポストカード・ペインティング」、墓石の写真と単語とを組み合わせた作品、詩の一節を人々に発音させ、彼らの口元をクローズアップしてスローモーションで再現したヴィデオ作品、ユートピア・プレスという名で自ら出版する書籍など、モーレイの仕事は常に言葉とイメージとの関係を主題にしています。




モノグラフ

 今回展示の中心となるのは、ボッティチェッリやフェルメール、セザンヌなど、東西の偉大な画家の個人作品集(モノグラフ)の表紙をキャンバスに単色で描いたブック・ペインティングです。
 ブック・ペインティングのシリーズは、見ることと読むこと、すなわち直接的・感覚的な経験と認識・記憶との力学に関わるものです。取り挙げられる書籍の主題は、それらが発表される場所の文化的歴史的背景の特殊性や関係性を考慮して選ばれます。そして作品の背景・地に使用される色彩は、その書籍そのもの、その作品が制作される場所、シリーズ全体の構成などから、直感的に選ばれます。文字に関しては、そのレイアウトやバランスは原典に忠実に描かれますが、地と図の関係を曖昧にするべく、また知覚し判読する時間を引き延ばすために、背景の色よりも僅かに彩度を落としただけの同じ色彩が用いられます。今回の作品が、これまでのブック・ペインティングと違うのは、出版社の名前やテキストの著者・編集者の名前が省略され、アーティストの名前と画像のみが描かれ、実際の書籍から離れた作品の自立性が増している点です。




今回のタグチファインアートでの展示は、サイモン・モーレイの日本での6度目の個展となります。2004年の日本での初めての個展「近代日本文学小史」以来の、久しぶりのブック・ペインティングの展示です。併せて「トレチェントの絵画」と題されたヴィデオ作品も上映致します。





出品作品

1. フラ・アンジェリコ

2. ピエロ・デッラ・フランチェスカ

3. ボッティチェッリ

4. レオナルド・ダ・ヴィンチ

5. ラファエロ

6. フェルメール

7. セザンヌ

8. 葛飾北斎

9. モネ

10. フィンセント・ファン・ゴッホ

11. アンリ・マティス

12. ピカソ

以上すべて:
2012年 アクリル・キャンバス 40.5 x 30 cm

13.トレチェントの絵画
ヴィデオ・プロジェクション(11分52秒)
エディション10