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西川茂 「under construction or destruction: modern city」


2024年4月6日-5月18日 タグチファインアート




































 西川茂(にしかわしげる)は1977年岐阜県生まれ。1997年に近畿大学理工学部土木工学科環境デザインコースを中途退学、2002年大阪芸術大学附属大阪美術専門学校芸術研究科絵画コース修了。2007年から1年間アメリカ・ニューヨーク州の障がい者と健常者の共同生活体「トライフォーム・キャンプヒル・コミュニティ」に滞在、絵画コースでアシスタントを務めました。これまでに奈良、京都、東京で個展を開催、現在は奈良市と京都木津川市を拠点に活動しています。

 西川は、都市に突然出現する布状のシートに覆われた、建設中、改築中、あるいは解体中の建築物や構造物を題材に、抽象的表現を試みてきました。西川にとってそれらは、都市を拡大していく人間の力と自然の力とのせめぎ合いの象徴です。シートの向こう側では、短期間のうちに建築物が出現したり、更地に戻されたりと風景が一変しますが、それにより私たちは目に見えている総てのものは堅固に安定したものではなく常に変化している、ということに気づかされます。西川の「シールド・ハウス」の作品は「万物の流動性」や「生成と消滅」、「時間」を表現しようとする試みであり、写実性、再現性から離れ大胆な筆触で描かれます。

 今回の展示では、仮囲いに覆われた住宅やビル、寺院、鳥居、橋脚、電波塔、メガソーラー等をモチーフにした作品群の構成により、近代以降の日本の典型的な都市風景を再現します。


 現代の日本において、郊外には新興住宅地が広がり続け、都市部には高層ビルが伸び続けています。新たな建物が建つことにより、かつてそこにあった建物や場所は忘れられ、そこに広がる風景は刻々と変化を続けていきます。こうして水平にも垂直にも広がり続ける現代の都市はどれほどの拡張を続けていくのでしょうか。様々な技術がアップデートされ洗練されていく中で、こうした都市の拡張は高度経済成長期からさして変わっていないように思います。
 ところで contemporary との比較で modern には現代以前の近代というイメージが強いですが、辞書によると近代だけではなく、現代のという意味を持ちます。にも関わらずモダンと言う時には、意味と現在の認識のズレを感じてしまいます。このズレを現代の洗練されアップデートされていく技術と、変わらない都市構造とのギャップに重ね合わせて、展覧会名を『modern city』と名付けました。郊外の田園風景に蔓延るメガソーラーなどは、そうした技術と変わらない都市構造が引き起こしたアナクロニズムな風景の一つだと思います。
 今回の個展『modern city』を通して現代の都市のあり方に迫っていければと考えております。

西川茂




出品作品

1.
Sealed Tower 157, 2024
油彩・キャンバス・パネル
91.0 x 116.7 cm

2.
Sealed Pier 2, 2024
油彩・キャンバス・パネル
116.7 x 80.3 cm

3.
Sealed House 130 -new town-, 2020
油彩・グラファイト・キャンバス・パネル
97.0 x 194.0 cm

4.
Light Field 2, 2011-24
油彩・グラファイト・キャンバス・パネル
150.0 x 150.0 cm

5.
Gap - Sealed Building 3, 2024
油彩・キャンバス・ステンレス鋼
61.0 x 67.6 cm

6.
Gap - Sealed Building 2, 2024
油彩・キャンバス・ステンレス鋼
49.0 x 66.7 cm

7.
Gap - Sealed Building 1, 2024
油彩・キャンバス・ステンレス鋼
49.0 x 64.5 cm

8.
Gap - Sealed Building 4, 2024
油彩・キャンバス・ステンレス鋼・鉄
65.2 x 53.0 cm

9.
Sealed Tower 31, 2024
油彩・グラファイト・金属粉・キャンバス
116.7 x 91.0 cm

10.
Sealed Gate 10, 2024
油彩・金属粉・キャンバス
60.6 x 60.6 cm

11.
Sealed Tower 32 -Light House-, 2024
油彩・キャンバス
72.7 x 53.0 cm

12.
Sealed Tower 33, 2024
油彩・金属粉・パネル
53.0 x 41.0 cm