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岩名泰岳 「みちつくり」


2023年1月14日-3月4日 タグチファインアート






































 岩名泰岳(いわなやすたけ)は1987年三重県生まれ。2010年に成安造形大学造形学部造形美術科洋画クラス卒業。卒業後すぐにアートアワードトーキョーで準グランプリを受賞。2016年には第1回三重テレビ大賞、2020年には三重県文化賞文化新人賞を受賞しています。卒業後2012年までドイツに滞在し、研究生としてデュッセルドルフ美術アカデミーで学びました。現在は故郷である三重県伊賀市島ヶ原を拠点に活動。大阪や東京のギャラリーで個展を重ね、「三重の新世代」展 (2015年 三重県立美術館) や「青森EARTH 2019: いのち耕す場所」展 (2019年 青森県立美術館)、「ステイミュージアム」展(2020年 三重県立美術館、作品も収蔵)など、美術館での展覧会にも出品しています。

 彼は2013年に結成された島ヶ原村民芸術「蜜ノ木」の初代代表を務め、都会の発想から生まれたアートを地方に移植するいわゆる「アートによる地域興し」的なものとは一線を画し、衰退していく集落に残って地元の歴史や風土、文化に深く根ざしながら、それぞれの分野で現実と戦っていく若者たちの創造的な行為自体をアートとして発信してきました。
 こうした「蜜ノ木」の活動は近年、アートコレクティブやローカリズムの事例として近年特に注目されていますが、そのなかで生み出される岩名の作品は、故郷の自然や村の信仰をモチーフとし、多くの場合具象的な題材から出発してはいるものの、その抽象度は高くとても洗練されたものとなっています。

 タグチファインアートで4回目の個展となる本展では、地元島ヶ原村民による道路整備の奉仕作業「みちつくり」をモチーフに描いた新作絵画を展示致します。本シリーズは昨秋のケルンでのアートフェア、アートコロンで初めて発表されました。現地では岩名作品の初めての紹介にも関わらず大変な好評を得ました。今後海外からの評価も楽しみなところです。


わたしの集落には年に幾度か村人が道路やあぜ道の草を刈る”みちつくり”と呼ばれる集まりがある。

朝、草刈機を担いで集合地点に行く。
国道につづく小さな坂は落ち葉とそこから生える草と雨で湿地のようだった。
近くにいた大きな男と草を刈りはじめた。
「だれかは大怪我をしたらしい、だれかは酒の飲み過ぎで動けないらしい、だれかは歳をとってもう草刈りはできないらしい」

<休憩の合図>

「うちの畑がまた獣に荒らされた」と道の反対側で笑う声。
数年前に使われていた小屋が蔦に覆われて大きく傾いていたし、一年前に赤いトマトが実っていた畑は荒地に変わっていた。

初めてみる人が黙々とトラックに草を積んでいるので声を掛けてみた。
「あなたはだれですか」
「ここで暮らしているのですか」

<草刈り再開の合図>

(岩名泰岳)



 最近は具体美術協会の代表的作家である元永定正氏との師弟関係において採り上げられられる機会も増え、来春のVOCA展(上野の森美術館)では大作の展示が予定されています。ぜひご高覧下さい。




出品作品

1. みちつくり (田舎道), 2022年
油彩・キャンバス,130.3 x 97.0 cm

2. みちつくり (あるじ), 2022年
油彩・キャンバス, 130.3 x 97.0 cm

3. みちつくり (農地), 2022年
油彩・キャンバス, 100.0 x 80.3 cm

4. みちつくり (やすみ), 2022年
油彩・キャンバス, 80.3 x 65.2 cm

5. みちつくり (畑荒し), 2022年
油彩・キャンバス, 72.7 x 60.6 cm

6. みちつくり (さかい), 2022年
油彩・キャンバス, 60.6 x 72.7 cm

7. みちつくり (山の音), 2022年
油彩・キャンバス, 65.2 x 53.0 cm

8. みちつくり (罠), 2022年
油彩・キャンバス, 65.2 x 53.0 cm

9. みちつくり (うわさ), 2022年
油彩・キャンバス, 60.6 x 50.0 cm

10. みちつくり (無題), 2022年
油彩・キャンバス, 53.0 x 45.5 cm

11. 獣たちの跡, 2022年
油彩・キャンバス, 45.5 x 53.0 cm

12. みちつくり (見知らぬ人), 2022年
油彩・キャンバス, 53.0 x 41.0 cm

13. みちつくり (集合場所), 2022年
油彩・キャンバス, 45.5 x 38.0 cm