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向山喜章 「Moonveda」


2011年10月21日-12月3日 タグチファインアート




























 向山喜章は1968年大阪府生まれ。1991年の初個展以来、日本とドイツを中心に作品を発表。現在は軽井沢を拠点に制作活動を続けています。ワックスを使用した美しい作品は、森美術館をはじめとして、大林組、エノテカ、サムソンなど国内外の多くの著名な企業や重要な個人コレクターに収蔵されており、今回の新たな方向性を試みる作品の発表により、ますますの活躍が期待されます。



ワックス

 向山は、分厚い半透明のワックスの背後から鮮やかな色彩がそこはかとなくぼんやりと滲みだした、美しい作品で知られています。正面からだけでなく、側面からも作品に入り込む光がワックスの層の内部で無限に反射し、そこに内包された光が、淡く微妙な色彩を作品表面に映し出す作品です。
 ワックスは彼が敬愛するヨーゼフ・ボイスやヴォルフガング・ライプが好んで作品に使用した、温かく有機的で人間と親密な優しい素材です。密教聖地である高野山で幼少期を過ごした向山は、神仏に奉納する祈りのメディウムであるロウソクを通じて、ワックスをとても馴染み深いものに感じ、自らの制作に重要な素材と考えています。



普遍的な光

 向山にとっての作品とは、彼が巧みな技術と細心の注意をもってかたち作るワックスの分厚い層や塊そのものではなく、そこに宿る普遍的な光です。彼の作品が矩形や円形など単純な形態をとり、シンメトリーであるのは、できるだけ日常的な事物や具象性から離れ、作品の荘厳さや崇高さを強調することに貢献しています。
 見えないものに深い存在を感じ、万物に魂が在る、宿ると信じる、そうした考えは密教だけでなく、古代の自然崇拝以来、日本人の信仰の根底に脈々と受け継がれています。向山は、不可視の神仏に灯明を捧げるという古くから行われてきた行為を、作品制作というかたちで日々黙々と実践しているのです。



新たな展開

 ワックスでの創作20年目の節目となる今回、これまで発表してきた分厚い層を持つワックス作品のうちから未発表の(Moonlitシリーズ)と、展覧会初出となるペーパーワックスの作品(Vedaシリーズ)を展示致します。鮮やかな色彩を封じ込めた「色/光への実践」としての作品から、白と黒のグラデーションを用いた「闇/奥行の実験」への移行・展開をご紹介致します。
 タグチファインアートでは初めての展覧会であり、向山にとって、実に11年ぶりの東京での個展です。ぜひご高覧下さい。




出品作品


1. monoveda, 2011,
アクリル・紙・蝋, 77 x 77 x 3.5 cm

2. moonveda, 2011,
アクリル・紙・蝋, 77 x 77 x 3.5 cm

3. monoveda no.1-6, 10, 2011,
アクリル・紙・蝋, 38 x 45.5 x 3 cm

4. moonveda no.1-6, 10, 2011,
アクリル・紙・蝋, 38 x 45.5 x 3 cm

5. monolit no.2, 2006,
蝋・油彩, 30 x 30 x 13 cm

6. moonlit no.2, 2006,
蝋・油彩, 30 x 30 x 13 cm